投薬、検査、安全性

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2024 BC  P 99

本セクションの目次

使用が禁止されている薬物および投与方法、レース参加者に対する制裁................................................. 100

ブリーダーズカップにおける公正確保の条件および競技会外検査............................................................ 100

競馬の公正確保と安全に関する統括機関(HISA)薬物ガイドライン................................................ 101-106

獣医師の(治療馬)リスト....................................................................................................................... 102

衝撃波療法................................................................................................................................................ 103

薬物規制標準化委員会(RMTC)投与中止に関するガイダンス......................................................... 107-111

総炭酸ガス測定......................................................................................................................................... 112

カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)薬物ガイドライン................................................................. 113-117

ブリーダーズカップ出走前検査................................................................................................................. 115

レース後の薬物検査.................................................................................................................................. 116

獣医師要覧................................................................................................................................................ 118

獣医師インフォグラフィックス.......................................................................................................... 119-122

 

11月1日および2日のレースの全登録馬(前座レースの登録馬も含む)は、各々のレース発走時刻の前48時間以内はラシックス(フロセミド)の投与を禁じられる。

レース参加馬の発走時刻または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教の前48時間以内は、あらゆる規制薬物の投与が禁じられるが、限定的に例外がある(発走時刻または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教の24時間前までであれば投与を許可される薬物については102ページを参照のこと)。特定の薬物、用量、投与経路、各馬の健康状態、投与されている他の薬物など、さまざまな要因を考慮したうえで、投与中止期間を延長してもよい。競馬の公正確保と安全に関する統括機関【Horseracing Integrity and Safety Authority(HISA)】が公表した検出時間は105-106ページで確認できる。多数の規制薬物について、投与中止に関するガイダンスが薬物規制標準化委員会(RMTC)から公表されており、108-109ページを参照できる。 

注:レース参加馬はすべて、国外から参加する馬も含め、米国内に所在する間に随時、HISAまたはブリーダーズカップ社(BCL)による競技会外検査の対象となる。99ページ以降に記載の規則をすべて参照のこと。ブリーダーズカップワールドチャンピオンシップ(BCWC)に出走するすべての競走馬は、本ガイドの100ページに記載されている公正確保の条件を遵守しなければならない。

ブリーダーズカップワールドチャンピオンシップは、カリフォルニア州の競馬規則、カリフォルニア州競馬委員会(CHRB)からの告示、HISAの規制、およびアンチドーピング&薬物規制(ADMC)規則に従って開催される。 

2024 BC  P 100 

使用が禁止されている薬物および投与方法、レース参加者に対する制裁

ブリーダーズカップでは、競馬の公正確保と安全に関する統括機関【Horseracing Integrity and Safety Authority(HISA)】が定めた国内規則およびそのアンチドーピング&薬物規制【Anti-Doping and Medication Control(ADMC)】プログラムを支持しており、特定の薬物や投与方法の利用を禁じ、ADMC規則の違反が疑われた事例に関する検査結果を公平に管理している。競走馬管理責任者は、レース参加馬への使用が禁止または規制されている薬物および投与方法に対して厳重に管理する義務を負う。ADMCプログラムに違反すると、失格、停止、一定期間または無期限の出走資格剥奪、罰金のほか、賞金、褒賞、トロフィー、得点、ランキング、その他授与された物全般の没収といった制裁が科される。さらに、規則違反を繰り返した場合またはその違反を犯す環境を悪化させた場合には、資格剥奪期間の延長、罰金の追加といった制裁が科されることがある。ADMCプログラムの規則については https://hisaus.org/regulations に掲載されているので、入念にお読みいただきたい。

ブリーダーズカップにおける公正確保の条件

1 予備登録した競走馬のすべての関係者は、HISA、規制当局、競馬場、または競馬関連団体から次の点に関する通知を受けた場合、必ずブリーダーズカップまで速やかに連絡すること。(1)当該関係者の競走馬がADMCプログラムの規則に違反している可能性があるか、その違反が懸案になっている。(2)現在、当該関係者が管轄区域または施設での競馬への参加を一時停止、禁止または却下されているか、参加資格を剥奪されている。

2 競走馬の関係者(馬主、調教師、騎手等)が非合法的または非倫理的な行為、あるいはブリーダーズカップワールドチャンピオンシップ(BCWC)の公正確保やBCWCへの定評を損なわせるような行為に関与していることが判明した場合には、BCLでは、独自の絶対的決定権に基づき、競走馬に対してBCWC出走資格の剥奪を宣言することがある。

ブリーダーズカップの競技会外検査

ブリーダーズカップへの出走資格が付与された競走馬または登録馬は、競技会外検査の対象となる。検体採取や検査は、競馬の公正確保・福祉ユニット【Horseracing Integrity and Welfare Unit(HIWU)】、もしくはHIWUと提携している国内外の規制当局またはHIWUの代行機関が行う。当該検査は、HISAが定めた規則に基づいて実施される。ブリーダーズカップの国内産馬を対象とする競技会外検査分析は、5つのRMTC認定試験所のうち1つが行う。これらの検査機関での通常の分析は、HISAまたはHIWUが定めた実施条件を満たす形、または当該条件の範囲を超える形で行われる。BCWCでは、すべての検体に対して最高レベルの検査を確実に実施し、BCWCの公正確保を担保する目的、さらにBCWCへの定評を維持する目的で、当該検査を義務づけている。HIWUまたはその代行機関は、HISAが定めた規則に基づいて競技会外検査を行う。これについては、現在でも今後も実質的に同じと考えられるので、ここで明確に記載しておく。この規則には、HISA規則3132(検査を実施する権限)、同3135(検体の所有権)、同3137(検体分析の目的)が含まれる。

2024 BC  P 101

 

ホースマンにとって特に重要な薬物に関するHISA規則

 

関節内注射

中手指節関節または中足趾節関節(「球節」)へのコルチコステロイド投与を除き、何らかの物質をどこかの関節に関節内投与1した場合、正式に公表されている定時の調教を7日間禁止され、レースまたは獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教を14日間禁止される。中手指節関節または中足趾節関節にコルチコステロイドを投与した場合、正式に公表されている定時の調教を14日間禁止され、レースまたは獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教を30日間禁止される。さまざまな要因(薬物の種類、全身投与量、治療が施された関節の数、治療が施された関節の特殊性等)に応じて、関節内注射の中止期間を延長してもよい。注:CHRBの規定により、カリフォルニア州でこの処置を受けた馬の場合、専属の獣医師は、動きの大きい関節(膝または足首)へのコルチコステロイドの関節内注射の前7日以内に画像診断を行わなければならない。

 

発効日:2024年7月8日 – 関節内注射に関する追加情報

 

規則2271(a)の規定は以下のとおりである。

(11)規則2271(a)(12)の規定に該当する場合を除き、レース参加馬がどこかの関節に何らかの関節内注射を施された場合、施行後7日間は調教の実施を許可されない、または施行後14日間は対象レースへの参加を許可されない。

 

(12)規則2271(a)(11)および規則4222にもかかわらず、レース参加馬は中手指節関節または中足趾節関節にコルチコステロイドを関節内注射された場合、施行後14日間は調教の実施を許可されない、または施行後30日間は対象レースへの参加を許可されない。

 

さらに、規則4224では「発走時刻から遡る180日間は、ポリアクリルアミドハイドロゲルの関節内注射を禁止する」と規定している。

 

規則2271(a)(11)および(12)における禁止規定は、以下に挙げる物質の関節腔への注射に適用される。ただしこの限りではない。

・オーソバイオロジクス(IRAP、PRP、幹細胞治療等)

・コルチコステロイド(ベタメタゾン、トリアムシノロン、イソフルプレドン等)

・ヒアルロン酸(HA)製品(Legend I.A.、Hy-Visc、Hylartin等)

・抗生物質

・医療機器(Spryng等)

・麻酔薬(メピバカイン等)

*禁止物質(スタノゾロール等)の関節内注射は、アンチドーピング規則違反の対象となる。

 

なお、上記の投与中止期間は、次に示す部位の内部または周囲への注射には適用されない

・仙腸関節領域

・滑液包

・副管骨

・近位繋靭帯

・腱鞘

・軸上筋

これらの部位の内部または周囲への注射は、HISAのADMCプログラムに基づく検査を通じて規制される。ただし、多くの場合には、治療を受けた馬の検体から陽性反応が検出されることを回避するため、14日間を超える投与禁止期間を設けることは必須になる可能性がある。

 

2024 BC  P 102

 

規制薬物

レース出走前48時間は、規制薬物の投与を禁止する。例外として、レース出走当日または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教から遡る24時間よりも前であれば、当該薬物を投与してよい。

 

1 経口用ビタミン製剤

2 ワクチン

3 潰瘍治療薬(シメチジン、オメプラゾール、ラニチジン等)

4 無添加の等張電解質溶液(経口用、静注用)

5 アルトレノゲスト(牝馬)

6 抗菌薬(抗生物質)および他の感染症治療薬。ただし、禁止物質が含有される抗菌薬または感染症治療薬、代謝によって禁止物質を生成する抗菌薬または感染症治療薬、またはプロカインペニシリンを除く。

7 競走馬への使用が承認・登録されている抗寄生虫薬または駆虫薬。ただし、禁止物質が含有される抗寄生虫薬または駆虫薬、代謝によって禁止物質を生成する抗菌薬または感染症治療薬、またはレバミゾールを除く。

 

HISA 2240 獣医師の(治療馬)リスト

(a)獣医師の(治療馬)リストは、任意の管轄区域において対象レースへの出走に不適格と判断されたレース参加馬について、規制当局が任命し、当局に登録済みの獣医師によって解除されるまで当局が維持する。

(b)レース参加馬は下記のとおり、除外されるまでは、規則2241および2242に従って獣医師の(治療馬)リストに残しておく。

 

(1)以下に該当するレース参加馬は、規制当局により獣医師の(治療馬)リストに記載される。

(i)疾病、身体的苦痛、医学的不具合、不健康、負傷、鼻出血、無気力、熱性疲労に見舞われている、または別段に出走に適さないとみなされたレース参加馬。

(2)不健康、負傷または鼻出血を理由に獣医師の(治療馬)リストに記載されているレース参加馬は、調教への参加を7日間禁止される。

(3)以下に該当するレース参加馬は、当局により獣医師の(治療馬)リストに記載される。

(i)365日を超えて出走していないレース参加馬

(ii)4歳になる年の1月1日より前に未出走の、レース未経験のレース参加馬

(iii)衝撃波療法を受けたことがあるレース参加馬

(iv)関節内注射を受けたことがあるレース参加馬

(v)クレンブテロールを投与されたことがあるレース参加馬

(vi)当局が指定するレース参加馬

(vii)対象レースに登録しようとしているが、現在何らかの状態で獣医師の(治療馬)リストに記載されているレース参加馬

(c)競走馬管理責任者および指定馬主(規則1020において定義のとおり)は、自身のレース参加馬が獣医師の(治療馬)リストに記載された旨を24時間以内に書面で通知される。

(d)獣医師の(治療馬)リストに記載されたレース参加馬について、規制当局または関連団体が任命した獣医師の裁量により、診断的検査が要求される場合がある。

HISA規則2241(獣医師の(治療馬)リストへの掲載期間)およびHISA規則2242(獣医師の(治療馬)リストからのレース参加馬の除外)についてはHISA競馬場安全規則を参照のこと。

https://bphisaweb.wpengine.com/wp-content/uploads/2024/06/Racetrack-Safety-Rules-6.14.2024.pdf

 

2024 BC  P 103

 

HISA規則2272 衝撃波療法

(a)衝撃波療法の使用は、公認の獣医師に限定される。規則2251により要求される報告に加え、競走馬管理責任者は施行後48時間以内に、規制当局が任命した獣医師に報告しなければならない。

(b)レース参加馬への衝撃波療法の施行は、当局に登録済みの機械を使用する場合に限り認められる。

(c)レース参加馬が衝撃波療法を受けた場合、獣医師の(治療馬)リストに記載され、施行後30日間はレースへの参加を許可されない、または施行後14日間は調教の実施を許可されない。

(d)規則2251に従って衝撃波療法を報告することを怠ると、獣医師は獣医師登録を1年以下の期間にわたり一時停止され、10,000ドル以下の罰金を科せられる。

(e)規則2272(a)に従って衝撃波療法を報告することを怠ると、競走馬管理責任者は競走馬管理責任者登録を1年以下の期間にわたり一時停止され、10,000ドル以下の罰金を科せられる。

(f)裁決委員は、この規則2272に対する違反の申立てすべてについて裁定を下す。規則2272(d)および規則2272(e)の下で科せられる一時停止処分の期間および罰金の金額の決定を目的として、裁決委員は、獣医師または競走馬管理責任者が説明する軽減要因と悪化要因をすべて、根本的な状況または違反の原因になった行為の重大度を含め、考察する。悪化要因の例として、この規則2272の下での報告要件を回避することを意図してレース参加馬を競馬場から退去させたことや、365日以内の期間における複数回の規則2272違反などが挙げられる。

 

競馬の公正確保・福祉ユニット(HIWU):アンチドーピング&薬物規制(ADMC)規則の実際

HISAのADMCプログラムの場合、レース参加馬にとって適切な投与中止に関するガイダンスを決定する際には、専属の獣医師および競走馬管理責任者(調教師)がその責任を負う。この決定は、競走馬の健康や代謝の状態、競走馬が投与を受ける可能性のある処方薬、獣医師や調教師のリスク回避レベル、公表されている検出時間といった因子等に基づいて行う。

 

リストに収載された薬物について投与中止に関するガイダンスを決定する際には、105-106ページの表を参考にする。

 

空欄は、各薬物の投与条件、検出時間、スクリーニングリミットに関する情報が得られていないことを示す。

 

2024 BC  P 104

 

理解しておくべきHIWUの用語

・禁止物質:処方、加工、提供、投与が常時禁止されている物質。当該物質は、検査、書類審査、サーベイランス、馬運車の査察、敷地の査察、入手した情報等による検体の照査すなわち精査の際に、検体中に存在してはならない。

 

・規制薬物(controlled medication substance):レース出走当日または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教に近い時期を除けば、レース参加馬への使用または投与は許可されている。ただし、使用禁止リストに明記されているとおり、規制薬物の種類によっては、正式に公表されている定時の調教後に採取した検体に存在することが容認されないものもある。

 

・レース参加馬(安全な馬)(covered horse):正式に公表されている定時の調教を1回以上終えているサラブレッドを指す。

 

・検出時間(detection time:DT):馬の一群に薬物を投与した後、特定の試料(血清、血漿、尿、毛髪等)の薬物濃度が全頭で検出限界(検査機関で検出可能な最小濃度)または既定のスクリーニングリミットを下回った時点のうち最も早期のものを指す。検出時間の判定に際しては、検査対象となった馬の頭数を明記しておく。

 

・使用禁止リスト(prohibited list):禁止対象の物質や薬物、規制対象の物質や薬物が収載されているリスト。

 

・競走馬管理責任者(responsible person):レース参加馬の調教師。調教師が存在しない場合には、馬主が競走馬管理責任者であり、レース参加者に含まれる。

 

・投与制限時間(RAT):レース前に、ある物質または複数の物質の投与が厳しく禁止されている時間帯。投与制限時間は、薬物検査、監視、または禁止期間中に投与が行われたという証拠の取得によって実施することができる。

 

・スクリーニングリミット(screening limit:SL):検査機関内で使用される判定基準。初回検査の結果、レース参加馬から得た検体中の物質濃度がスクリーニングリミットを下回った場合には、禁止物質が存在する可能性はないものと判断する。一方、レース参加馬の検体中の物質濃度がスクリーニングリミット以上を示した場合には、この陽性所見を裏づけるための分析を続行する。

 

・投与中止に関するガイダンス(withdrawal guidance):規制当局または獣医師が従来から出している「薬物の投与から次回の投与までに空けるべき最小時間間隔」に関する勧告。具体的な投与量、投与経路、レースまたは定時の調教に関する内容も含まれる。HISAのADMCプログラムの場合、レース参加馬にとって適切な投与中止に関するガイダンスを判断する際には、専属の獣医師および競走馬管理責任者(調教師)がその責任を負う。こうした勧告は、HISAやHIWUからは出されない。

2024 BC  P 105

 

HISAによるスクリーニングリミット

2024 BC  P 107~112

 

RMTC「投与中止に関するガイダンス」についての通達:RMTC、HISAによるADMCの検出時間に関連する「投与中止に関するガイダンス」を策定(2023年3月24日以降)

 

RMTCの科学諮問委員会(SAC)では、分析を行い、データを活用できた場合には、RMTCが作成した「規制対象となる治療用物質(CTS)」リストに記載されているADMCのスクリーニングリミットおよび検出時間に関連する「投与中止に関するガイダンス」を策定した。投与中止に関する指針は、情報提供のみを用途としている。ホースマンは、専属の獣医師と相談しながらこの情報を利用することが望ましい。ただし、投与中止に関する指針の内容が保証されているわけではない。

 

理解しておくべき用語

スクリーニングリミット(screening limit:SL):検査機関内で使用される判定基準。初回検査の結果、検体中の物質濃度がスクリーニングリミットを下回った場合には、禁止物質が存在する可能性はないものと判断する。一方、検体中の物質濃度がスクリーニングリミット以上を示した場合には、この陽性所見を裏づけるための分析を続行する。

 

検出限界(limit of detection:LOD):検査機関で検出可能な最小濃度。

 

投与制限期間(restricted administration time:RAT):レース出走前で、物質の投与が禁止されている期間。サーベイランス、診療記録の審査、さらに薬物検査の結果によって設定される。

 

検出時間(detection time:DT):特定の試料(血清、血漿、尿、毛髪等)の薬物濃度が全頭で検出限界(検査機関で検出可能な最小濃度)または既定のスクリーニングリミットを下回った時点のうち最も早期のものを指す。検出時間と投与中止期間は同等ではない。

 

休薬期間(withdrawal time:WDT):「単剤の投与から次回の投与までに空けるべき最小時間間隔」に関する勧告。具体的な投与量、投与経路、治療計画、レースまたは定時の調教に関する内容も含まれる。休薬期間は、検出時間に加味される安全域の情報になる。この情報は、治療の意思決定を導いたり不利な結果を回避したりするうえで有用である。

 

方法論

薬物の消失半減期は、薬物動態学的パラメーターであり、「投与された薬物の血漿中濃度または体内の総量が50%の値になるために要する時間」として定義される。1半減期は薬物の50%、2半減期は75%、3半減期は87.5%、4半減期は93.75%がそれぞれ体内から消失した状態である。

 

薬物の検出時間を判定するために実施された投与試験では、その大半が少数の馬を対象としている。したがって、このサンプルサイズでは、母集団全体が正確に反映されているとはいえない。また、検出時間は薬物の消失に寄与するすべての変動要因の説明材料にはならない。SACでは、上記の4半減期、すなわち薬物の94%(正確には93.75%)が体内から消失した状態が安全域の説明材料になるものと判断した。また、これらの変数について明らかにする必要性、さらにこの「投与中止に関するガイダンス」を策定する必要性を確認した。

 

2024 BC  P 108

 

この投与中止に関するガイダンスを策定するうえでの方法論は、規制対象となる各治療用物質について終末期半減期(既公表の研究データ、RMTCの投与試験データから抜粋)の平均値を算出すること、またADMCプログラムで提唱されているスクリーニングリミットを検出時間の判定に応用することに基づいている。特定の物質が示す4半減期を、算定した検出時間に加味する。SACの合意に従い、この数字を丸めて最も近い整数で表してもよい。4半減期には、馬の体内に残留していた薬物の94%(正確には93.75%)が消失し、その濃度は既定のスクリーニングリミットを既に下回っている。

 

注:独自の研究で得られたデータであり、馬の頭数も独自に決定しているため、この方法論はRMTCが作成した「規制対象となる治療用物質」リストに収載されていない物質には適用できない。投与データが得られていない場合や研究のサンプルサイズが小さい場合、その物質にこの方法論を適用すると、さまざまなリスクファクターを伴う。

2024 BC  P 109

 

1 ADMCが公開した検出時間。

2 検出時間を判定するために実施された投与試験での馬の頭数。

3 アルブテロールについては、ADMC規則に従い、吸入以外の経路で投与する場合には禁止物質とみなされる。

3A 現存のデータを踏まえると、RMTCがアルブテロールを対象とした投与中止に関するガイダンスを策定することは難しい。十分な注意を要することから、投与中止期間を判定する際には、IFHAが提唱している検出時間(72時間)を基本として当てはめることが望ましい。72時間という検出時間は、吸入による投与経路を選択した場合に厳密に当てはまる。

4 RMTCの科学諮問委員会(SAC)では、デトミジンを用いた投与試験のデータを検討し、その際にADMCのスクリーニングリミットを適用した。その結果を踏まえて、SACでは検出時間を24時間にするよう勧告している。また、4半減期の方法論を適用し、休薬期間を48時間にすることを提唱している。

ADMCが特定したデトミジンの検出時間は48時間であり、これはRMTCが提唱した休薬期間と同等である。別に明記しない限り、この認識はデトミジンのみに当てはまる。

5 メトカルバモールの経口投与では、体外排泄の時間を余分に加味することが必要となる。

6 レース出走後または調教後の馬から採取した血液検体で2種類以上のNSAIDが検出された状態は、違反が重複されていることを意味する(血液検体で2種類以上のNSAIDが検出された状態)。

7 3種類のNSAID(フルニキシン、ケトプロフェン、フェニルブタゾン)の検出時間(DT)は48時間である。うち1種類のみについては、検出時間が48時間であることを踏まえて、投与中止に関するガイダンスに即して投与してもよい。違反の重複を回避するため、ADMCの2回目の検出時間を参照のこと。

8 現時点でテータを入手できないため、RMTCでは、プレドニゾロンを対象とした投与中止に関するガイダンスを策定できていない。

9 レース出走後または調教後の馬から採取した血液検体で2種類以上のコルチコステロイドが検出された状態は、違反が重複されていることを意味する。

10 RMTCがコルチコステロイドの関節内注射について示した7日間の投与中止に関する指針は、調教後検査または競技会外検査の検体中の物質(ベタメタゾン、イソフルプレドン、トリアムシノロン)に適用する。

11 メチルプレドニゾロンについては、どの経路から投与する場合でも、薬物検査を行うことが望ましい。

12 筋注の場合、血漿中または血清中濃度は既定のスクリーニングリミットを長期間にわたって上回る。

13 RMTCのデータで、デキサメタゾンリン酸ナトリウム40mgを単回経口投与した時。

14 この投与中止に関するガイダンスはもっぱら、フェニルブタゾンの4.4 mg/kg単回静注およびHISAのADMCプログラムが提唱するスクリーニングリミットである血中濃度300 ng/mLに基づく。

15 この投与中止に関するガイダンスでは、40mg(2mL)を肢遠位部に単回皮下注した時に限定されている。

 

2024 BC  P 110

 

免責条項

 本稿に掲載されている「投与中止に関するガイダンス」は、ホースマンおよび専属の獣医師に向けた手引きとして策定されたものであり、HISAによる審査や承認を得ていない。また、RMTCでは、本ガイダンスへの遵守によって陽性所見の検出を回避できることを保証しているわけではない。薬物の過剰使用が行われた場合には、競走馬の絶対的な保証人としての調教師の責任を軽減することはできない。本稿は、ホースマンおよび専属の獣医師にとって独自にリスク分析を行う際の手引きになる情報を提供することのみを目的に作成されている。

 

 本稿に掲載されている情報は変更されることがある。各薬物に関する新規の研究データが得られていることから、投与中止に関するガイダンスに記載されている検出時間が延長または短縮する可能性はある。新規の研究に基づいて本稿の情報が更新される場合、当該情報はSACの審査およびRMTC委員会の承認を得た時点で更新される。

 

 本稿に掲載されている検出時間は、6頭の馬を対象とした実験データに基づいて算出されたものである。この実験では、管理された環境で馬に単剤を投与し、当該薬物が投与後の測定時点で存在するかどうかを調べる目的のみで検査を行った。投与中止に関するガイダンスは、統計解析に基づく検出時間に依拠している。どの測定時点も、投薬が行われたあらゆる状況を把握することを意図して設定されたものではない。

 

 この実験対象となった馬は、いずれも健常である。罹患馬の場合、薬物の代謝機序が健常馬と異なる可能性がある。その結果、検出時間は延長し、投与中止に関する指針は無意味になる。調教中の馬と比較した場合、実験対象の馬では、検出時間に影響を与えうる因子(運動プラン、食餌、一般的な飼育)が異なり、投与中止に関する指針が推奨されている可能性がある。

 

 処方薬を投与した時の剤形や濃度が異なれば、薬物が体外に消失する状態も変わり、これによって検出時間も変化する可能性がある。この場合、投与中止に関する指針は適用できない。合剤は、規制当局の監視対象から外れており、その濃度、安定性、純度については検証されていない。このため、合剤の使用は別のリスクをもたらす。

 

 また、検出時間およびこれに関連する投与中止に関する指針は、特定の投与経路とも関連している。一般に、血管や関節腔以外の部位に薬物を偶発的に投与すると、薬物動態が顕著に異なってくるため、本稿に掲載されているガイダンスは無意味になる。さらに、薬物の経口投与や、2種類以上の薬物またはサプリメントの併用投与も、検出時間を変化させる原因になりうる。したがって、投与中止に関するガイダンスの妥当性に影響が及ぶ。経口投与の後には、バケツ、飼葉桶、さらに馬房を洗浄することに十分な注意を払わなければならない。

 

 RMTCでは、ホースマンと獣医師に対し、上記の知見を指針として活用するよう勧めている。ただし、これらの知見は、規制当局に遵守していることを保証するものではない。有用な情報にはなるが、実際の状況全般に合致するような厳しい基本方針を意図しているわけではない。RMTCでは、ホースマンと獣医師に対し、「馬の検査の場合、投薬を正確に繰り返していても、依然として許容範囲外の濃度を検出することがある」と注意を喚起している。もしホースマンや獣医師が馬の特異的な治療に対し不安を抱いているのであれば、HIWUから薬物検査を要請すべきである。

 

2024 BC  P 111

 

HISA 8400 調査の権限

(a)委員会、当局またはその被指名者は、

 (1)下記のものを自由に利用できる機会を有する。

  (i)レース参加者に関係する書物、記録、事務所、競馬場の施設、さらにレース参加馬のケア、治療、調教、レースに関係するレース参加者の事業所

  (ii)レース参加馬の所有者またはレース参加馬に関わる業務に携わっている者に関係する書物、記録、事務所、施設、さらにレース参加馬のケア、治療、調教およびレースに関係するレース参加者の事業所

(2)合衆国法典第15編第57条(a)の規定または当局の規定に違反しているか違反の疑いのあるすべての医薬品、薬物、物質または所持品、さらにその違反または違反が疑われる事態を助長させるために使用された可能性が十分に考えられるすべての物または器具類を没収することがある。

 

(b)委員会、当局またはその被指名者は、違反事案の最終的な解決をもって、没収した物(携帯電話、PC、当局の法令または規則によって所持が特に禁止されていない電子データ保存用装置等)を返却する。

 

(c)レース参加者は、

 (1)いかなる調査に際しても委員会、当局またはその被指名者と連携する。

 (2)委員会、当局またはその被指名者からレースに関する事案についての質問を受けた際には、自身がもつ知見の中から最も正確な回答を出す。

 

(d)レース参加者、職員、従業員、さらにレース参加者の代理人は、合衆国法典第15編第57条(a)または当局の規定に基づく調査、あるいは当該規定を強制執行または施行するための調査を妨害してはならない。

 

(e)委員会または当局は、その権限の範囲内で、訴訟手続に際して証人の立ち会いを命じることがある。また、その権限の範囲内で、当該事案に関係する文書類、記録、印刷物、書物、備品、器具類、設備および他の用具類の提出を命じることがある。

 

(f)召喚命令を遵守しない場合、あるいは当該規則が定める他の事項を遵守しない場合には、規則8200が定める1項目以上の制裁を科すことがある。

 

(g)委員会または当局は、その権限の範囲内で、当該事案に関して証人に宣誓させることがある。また、当該事案に関して証人に宣誓証言を要求することがある。

 

注:この規定では、すべての処方薬について、カリフォルニア州競馬委員会【California Horse Racing Board(CHRB)】が公認した獣医師によるラベル表示が要求されている。このラベル表示のない薬物は、禁制品とみなされる。調教師が処方薬を持ち込む際には、自身の馬を担当するCHRB認定獣医師に相談すべきである。

 

2024 BC  P 112

 

総炭酸ガス測定-HISA規則5430 血液検体の採取

 総炭酸ガス(TCO2)を測定するための血液検体の採取は、レース出走後だけでなく出走前にも行うことがある。使用禁止リストには、アルカリ化またはアルカリ化薬の投与(規制投与方法)を裏づけるための明確な証拠とみなされるTCO2濃度が明記されている

 

経鼻胃管からの電解質の投与

 いずれの物質や薬物についても、馬が登録しているレースの発走時刻または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教から48時間以内に経鼻(胃管)から投与することを禁止する。無添加のアイソトニック電解質溶液は、いつでも自由に飲むことができる。

 

レース出走当日には水しか摂取できない

 これはきわめて厳格かつ明確に定められている規則である。レース出走当日、馬の口を洗浄する際に水以外のものを使用してはならない。ウインドエイド(Wind Aid)、グリセリン、あるいは水以外の他の物質を与えると失格になる。この違反のためにGIレースを失格となった馬も存在する。この方針はBCWCにも同様に当てはまる。

 

処方薬

 CHRBの厩舎での投与が許可されている処方薬は、CHRB認定獣医師がCHRBの規定に準じてラベル表示を施し、かつ公認の獣医師に適宜報告されている薬物に限られる。これに該当しない薬剤については、いずれも投与が禁止されている。国外からの参加者は、「たとえ専属の獣医師が処方した薬物であっても、当該薬物が米国FDAの認可を受けていない可能性があり、その場合はADMC規則に基づいて禁止物質とみなされる」という点を覚えていただきたい。投与が必要な処方薬または国外から携行した処方薬について疑問があれば、自身の馬を担当するCHRB認定獣医師に相談されたい。

 

せん馬

 ブリーダーズカップのレースで該当するケースはまれではあるが、初めて去勢した馬については、登録時にレース事務局および競走馬の個体確認担当者に必ずその旨届出なければならない。調教師はこの点を覚えておく必要がある。

 

2024 BC  P 113~117

 

薬物に関するCHRBの規則・規定

CHRB認定主任獣医師 Dr. Tim Grande:デルマー +1(858)792-4330、携帯 +1(626)476-8743

CHRB馬診療部長 Dr. Jeff Blea: +1(626)862-6149

CHRB安全性裁決委員 David Nuesch: +1(626)975-0925

CHRB安全性裁決委員 Paul Atkinson: +1(626)253-2545

裁決委員会: +1(858)755-1141  x3831

 

CHRB規則1846.1 獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教目的またはレース出走目的で厩舎入厩に関する獣医師の記録

(a)競走馬がレース出走当日から遡る30日間または獣医師の(治療馬)リストから除外するための調教から遡る30日間にわたって委員会の管轄下にある厩舎に留まらなかった場合、調教師は、獣医師による過去30日分の診療記録を公認の獣医師に提出しなければならない。この場合、委員会が指定した書式を使用し、認定を受けた厩舎への到着から24時間以内、かつ予定されているレースまたは調教が実施される前の時点で提出する。この診療記録には、(1)治療を受けた馬の名称とID番号、(2)獣医師が過去30日間に投与または処方したすべての医薬品、薬物、物質、さらに獣医師が過去30日間に行った診断や処置の内容、(3)処方や治療を担当した獣医師の氏名、(4)担当医が検査を実施した日付、(5)収容形態(馬房、馬柵、牧場)に関するそれぞれの情報を記載しておく。この診療記録は、公式の獣医師にEメール(送付先:ovsocaltb@yahoo.com)またはEquiTAPSで送付する。カリフォルニア州以外の調教師はHISAポータルから30日間の治療記録をダウンロードし、CHRB認定獣医師に提出する必要がある。

 

2024 BC  P 114

 

CHRB規則1853 実施が要求される検査

(a)公認の獣医師は、レース出走を予定している各馬を対象に、出走に適しているかどうかに関する検査を実施する。競走馬の個体確認担当者は、委員会が作成した個体識別記録および写真、血統登録、刺青または烙印で示された番号等、個体識別が可能な特徴を手掛かりにしながらその作業に従事する。蹄鉄を検査する者は、全頭を対象に当該検査を実施する。レース出走に不適と判断された馬、正確な個体識別が不可能であった馬、さらに蹄鉄の不備が認められた馬には、出走資格は付与されない。この宣言は裁決委員が行う。

 

(b)調教師が登録時に蹄鉄不装着でレースに参加する旨を公表すれば、蹄鉄不装着の馬には出走資格が付与される。

 (1)調教師は、前回の出走時に蹄鉄を装着しなかった馬について、今回は蹄鉄を装着して出走するかどうかを登録時に公表する。

 (2)上記の(b)または(b)の(1)に基づいて公表された内容は、公式のプログラムに記載する。さらに、蹄鉄を装着しないのが前肢、後肢のどちらなのか、あるいは四肢なのかについても触れておく。

 (3)本規則における「蹄鉄不装着」とは、競走馬が前肢、後肢、または四肢に蹄鉄を装着せずに走ることを指す。

 

CHRB規則1847 肢の神経ブロック

 神経ブロックについては、「肢の疼痛感覚を緩和させる目的で、局所麻酔薬や他の薬剤を組織の一部に浸潤させるか、神経の上部に局所的に直接投与するか、あるいは関節腔、腱鞘、または滑液包に直接注入させて、その感覚を麻痺させる行為」と定義される。競走馬の登録時以降には、この医療行為を実践することは禁止されている。なお、氷の使用は禁止されていない。

 

X線検査および他の画像診断の要請

 Business & Professions Code (事業・専門職法)19583.9(d)では、診察を担当する獣医師が画像診断の実施を要請することを許可している。画像診断の利用は、診察を担当する獣医師によるレース出走前の検査の一環として容認される。公認の獣医師は、画像診断の利用が必須と考えられる場合には、その実施を指示して差し支えない。

 

CHRB規則1848 肢巻(バンテージ)

 肢巻に限っては、レースの最中に競走馬に装着することが公認の獣医師によって承認されている。これ以外で肢に巻きつけてある物については、競馬場への入場に際してパドックを出る前にすべて外しておくこと。

 

CHRB規則2271 禁止行為

下記の事項は禁止行為に該当する。

(a)調教やレース出走のために、競走馬の健康・福祉を害するような損傷の影響または徴候を隠蔽する目的で、物理的または獣医学的処置を施す行為。

(b)レース出走時または調教時に、肢の感覚を麻痺させる可能性のある手法で体外衝撃波療法を施す行為。

(c)肢に関係する筋骨格系の感覚を麻痺させる目的で、外科的または化学的手法による神経切除術を施す行為。

(d)焼烙療法(ピンファイリング、フリーズファイリング等を含む)あるいは皮膚に小嚢胞や水疱を形成したり対向刺激効果をもたらしたりする何らかの物質を使用する行為。

(e)何らかの装置(牛追い棒、バッテリー等)を用いて、競走馬に電気ショックを与える行為。

(f)電気による医療用具(磁気療法、レーザー、電磁気を使ったブランケット、ブーツ、電気刺激、または調教や予定発走時刻から48時間以内に鎮痛効果をもたらす可能性のある電気器具)を使用する行為。注:HISA規則2271では、出走予定時刻から遡る48時間には、外部電源を必要とする医療器具の使用を禁止している。この医療器具には、電磁気を使ったブランケット、ワールプールブーツ(whirlpool boot)、レーザー、パルス電磁場療法、ネブライザー等が含まれる。

 

2024 BC  P 115

 

CHRB規則1852 待機馬房への入所

競走馬が裁決委員から指定された時間に待機馬房にいることが公認の獣医師に報告されていない場合には、当該馬には出走資格は付与されない。調教師は、裁決委員から指定された時間に担当馬を待機馬房に必ず入所させておく。

 

CHRB規則1854 待機馬房および検体採取所からの立ち退き

 公認の獣医師は、レースに参加しないすべての競走馬またはレースに向けて調教を受けていないすべての競走馬、さらに当該競走馬の世話に従事する必要のないすべての個人を、待機馬房や検体採取所から立ち退かせる。レースへの参加を予定している競走馬の待機馬房には、その管理者または公認の獣医師の許可を得ない限り、いかなる者も立ち入ってはならない。待機馬房の競走馬の所有者、調教師、世話の担当者以外の者は、馬体検査を行ってはならない。また、馬房の管理者または公認の獣医師から立ち退きを命じられた場合には、それを拒絶してはならない。

 

ブリーダーズカップ出走前の検査

 ブリーダーズカップ社、CHRBおよびデルマーサラブレッドクラブでは、規制当局が任命した公明正大かつ経験豊富な獣医師を結集し、ブリーダーズカップワールドチャンピオンシップ開催直前の数週間に、一連の馬体検査や馬具を装着した競走馬の観察に従事している。

 

 チャンピオンシップ開催前日には、競走馬の検査はさまざまな機会に実施される。ブリーダーズカップの獣医師による検査結果で必要と判断されれば、競走馬の出走が許可される前に、画像診断を追加してもよい。

 

 BCWCに出走するすべての競走馬および前座レース出走馬に対しては、指定された速歩用走路での歩様(速歩)検査が義務づけられており、馬場での調教の許可を得る前にこれに合格することが求められる。詳しくはA2ページを参照のこと。

 

 競走馬関係者に協力いただき、スケジュール決め、馬の準備(バンテージなし)をしていただくことが、チームメンバーの任務遂行の助けとなります。事前に訪問スケジュールを相談したい場合、Dr. Will Farmer  +1(260)438-4151またはDr. Deborah Lamparter  +1(856)625-5600まで連絡されたい。

 

2024 BC  P 116

 

レース当日の検査

 競走馬の個体識別担当者および蹄鉄検査担当者は、レース直前に集合場所(厩舎Z)で各競走馬の検査を実施する。不健全で出走不適と判断された馬、個体識別が不可能であった馬、さらに蹄鉄が適切に装着されていなかった馬については、出走資格が付与されない(出走取り消しとなる)。これは、裁決委員によって宣言される。

 

競走馬の健康状態に関する検査

 CHRBの獣医師は、レース出走当日朝の任意の時間に、すべての競走馬に対して健康状態の検査を実施する。この検査では、速歩で移動する競走馬を観察する。これに立ち会う者は、検査が終了するまで当該馬に付き添わなければならない。CHRBの獣医師によって不健全で出走不適と判断された馬に対しては、裁決委員が出走からの除外を決定できる。この検査に関する詳細情報は、それぞれの調教師に提供される。

 

レース後の薬物検査

 ブリーダーズカップワールドチャンピオンシップ(BCWC)の登録馬全頭はいつでも検査の対象となり、馬主、調教師、その他馬を管理する者は、馬の検査を拒否してはならない。BCWCレースに出走した全馬は、レース後の検体採取の対象となる。

 

すべての検体の分析は、5つのRMTC認定試験所のうちの1つによって行われる。これらの試験所における定期的な検査は、HISAまたはHIWUが定めたプロトコルを満たし、または上回るものであり、BCWCが、すべての検体について可能な限り最高レベルの検査が実施されることを保証し、BCWCの公正性と名声を維持するために義務付けているものである。

 

 HIWUのウエブサイト(https://www.hiwu.org/)では、検査の流れに関する全般的な説明を掲載している。

 

拒否、不遵守の行動、又は回避的な行動は、ドーピング防止規則違反とみなされ、罰金及び/又は 資格停止期間を含む、競走馬管理責任者に対応する罰則が科される可能性がある。

 

2024 BC  P 117

 

投薬、検査、獣医学、安全性に関する規則と規制の詳細情報についてはさまざまなリソースがありますので、ご遠慮なくお問い合わせください。

 

下記のいずれかにお問い合わせください。

 

CHRB馬診療部長 Dr. Jeff Blea:+1(626)862-6149

CHRB認定主任獣医師 Dr. Tim Grande:+1(858)792-4330

HIWU科学主任 Dr. Mary Scollay:+1(859)489-7677

HIWU馬用薬物リソース部長 Dr. Patricia Marquis:+1(305)206-7034

HISA馬安全性・福祉部長 Dr. Jennifer Durenberger:+1(516)680-3199

CHRB安全性裁決委員のDavid Nuesch:+1(626)975-0925およびPaul Atkinson:+1(626)253-2545は、CHRBの方針や厩舎手続関連規制にも詳しい。

 

BCWCの公正確保の条件においては、予備登録した競走馬の関係者のうち誰かが規制機関、競馬場または競馬関連団体から、(i)当人に関係する係属中または潜在的な薬物違反について、または(ii)当人が現在、属する管轄区域または施設で開催されるレースへの参加を一時停止、禁止、排除または拒否されていることについて通知を受けた場合、当人は速やかにその旨をブリーダーズカップへ報告しなければならない、と規定している。

 

BCLは、単独の絶対的裁量にて、いかなるBCWCレースにおいても、ある馬の関係者(馬主、調教師、騎手など)が不法行為、非倫理的行為、あるいは別段にBCWCの公正確保または評判を毀損しかねない行為に関与した場合、当該馬を不適格と宣言することができる。